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がん=死というイメージを捨てて

(健康いわて319号より)

がんを怖がるのは当然です。

ある意味では、避けようのない天災と似ています。内閣府による世論調査(令和元年度)では、がんをこわいと思う人は約7割。

その理由として一番多く挙げられたのが「死に至る場合がある」でした。多くの人が「がん=死」という「イメージ」を持っていることが分かります。

 

しかし、治療の進歩によって生存率は大きく向上しています。限局がん(原発臓器に限局)で治療した場合は、胃・大腸・乳房・子宮頸がんなどのがんでは、治癒が期待できます。「がん=死」ではなく、ある意味では慢性的な疾患に近づきつつあります。

一方、「がん=死」という「イメージ」に近いがんとして、膵臓がんがあります。発見・治療ともに難しく、生存率も低くなっていますが、現在、その改善に向けて研究が進められています。

いわゆる進行がん、様々な臓器に転移しているがんも、治療が困難なことが多く、がんの「イメージ」に近いものです。

 

芸能人ががんで亡くなると、大々的に取り上げられることが多く、それもまた「がん=死」という「イメージ」につながっているのかもしれません。しかし、それは「イメージ」です。正しい知識を得て、認識を新たにしましょう。がんは早期発見と早期治療によって治癒が期待できる病気です。

がんは身近な病気です

2人に1人ががんになる時代。そういったフレーズに触れたことのある方は多いのでないでしょうか。とはいえ、これは生涯罹患率です。若いうちはがんにならない、と思っている方も多いのではないでしょうか。

 

50歳までの年齢において、がんになる確率は、男性で37人に1人、女性で16人に1人です。50代の方は同級生のなかにがんになる方がいる確率が高いといえます。

 

定年である60歳までの確率では、男性で13人に1人、女性で8人に1人となります。20人程度の小さな会社においても、定年を迎えるまでに少なくとも1人はがんになる可能性があるといえます。

 

女性の罹患率が高いのは、若い世代や働く世代で多く見られる乳がんと子宮がんの影響です

 

がんはとても身近な病気です。がんになっても話さない方も多いので、実際に聞こえてはこなくとも、誰かががんと診断されています。自分ががんと診断される可能性も、友人や会社内で誰かが診断される可能性もあります。突然の知らせに慌てふためくのではなく、健康なうちにがんのことをしっかりと知り、それに備えることが大切です。

正しい情報を、健康なうちに知ること

がんの情報は玉石混交、科学的な正しい情報から商売目的の情報まで入り乱れています。

先述の世論調査では「がんの治療法や病院についての情報源」として、「病院・診療所の医師・看護師」が66.4%、「インターネット」が35.6%、「家族・友人・知人」が34.5%と続きます。

 

静岡がんセンターがまとめた「がんと向き合った4,054人の声」という調査では、診断から現在までの情報の集め方として、「医師・薬剤師・看護師」を挙げた人が69.0%、「書籍・雑誌」49.2%、「インターネット」46.1%、「家族・友人・周囲の人」37.8%となっています。

 

さて、手軽な情報収集として、インターネットで試しに「がん」と検索してみましょう。その情報量に圧倒されるのではないでしょうか。医療機関、自治体、製薬会社、体験談ブログから、怪しげな健康食品やがんは治ると断言する情報まで、同じようにリストが並びます。どのようにして真偽を確かめれば良いのでしょうか。

がんについての普及啓発を進めているがん研究振興財団が発行している「がんを防ぐための新12か条」ハンドブックでは、次のようにポイントをまとめています。

いつ作られた情報か
医療技術は進歩しています。10年前の情報では、現在と状況が違う可能性があります。
だれが提供しているか
特定の会社の広告や宣伝であったり、医師であっても個人の意見である場合には、科学的に正しくないこともあります。
なにを提供しているか
その情報が動物や小規模での実験段階ではないかどうかを確認するよう勧めています。

支えるための、正しい情報

静岡がんセンターの調査では、相談先に「家族・友人」が挙がっています。自分自身ががんにならなくても、家族や友人から相談を受けることがあるかもしれません。がんに寄り添い、支えるためにも、正しい情報を知っておくことが大切です。

 

診断や治療についてすべてを覚えておく必要はありません。どこにアクセスすれば、信頼できる情報があるのかを覚えておきましょう。がんに関しては国立がん研究センターの「がん情報サービス」が一番です。ここには、自身が宣告されたときのガイドブックや、家族が罹ったとき、辛い気持ちへの対処などの本がPDF形式で無償提供されています。検査や治療法についても記載されています。

 

労働者においてはその上司や労務担当者への、治療による休暇取得や復帰、就労の継続についての相談が多くなります。がんに関する知識はもちろん、法令や社内の就業規則への熟知が必要です。これについては厚労省が「治療と仕事の両立支援」として、様々な施策や啓発を進めています。働く世代の高齢化や、女性の社会進出で、勤労世代のがんの増加が予測されています。労務担当や管理職となる方については、正しい知識が求められます。

がんの治療

がんになる方は微増を続けています。一方、死亡率をみると、1990年代後半からはっきりと減少傾向にあります。治療法や技術、医療機器の向上・進歩、新薬の開発などによって、死亡率が下がっているのです。がんは治す、治せる、治癒を目指せる時代になってきています。

 

がんの主な治療は、手術、薬物療法、放射線治療などに分けられます。がんの種類や進行具合、またそのサブタイプなどにより治療法は大きく異なります。これも先の「がん情報サービス」に掲載されています。

 

たとえば、子宮頸がんを見てみましょう。早期の場合には、その部分を含めた切除を行い、妊娠できるような治療が可能です。しかし、拡がりがある場合には子宮の摘出や、さらに広範囲の切除が必要となり、薬物療法や放射線治療などを行うこともあります。

 

がんと診断された方の仕事に関する悩みを集めた例(静岡がんセンター)では、「体力低下」47.5%、「副作用・後遺症による症状」41.5%となっています。長い期間に渡り、定期的な抗がん剤治療が必要となる場合には、副作用と体調の浮き沈みもあり、今後への不安を抱える方が多くいます。就労への意欲があっても、立ち仕事や肉体労働が難しいことが多く、職場の理解が欠かせません。

健康、安心、がん検診

がんを完全に防ぐ方法は残念ながらありません。非喫煙者でも、お酒も飲まず、適度な運動習慣があっても、がんになることがあります。防げないからこそ、がん検診が必要です。しかし、検診受診率は5割程度に留まっています。

 

受けない理由について世論調査では、「受ける時間がないから」28.9%、「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」25.0%、「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」23.4%となっています。

この2番目と3番目の理由については、がんにまつわる大きな誤解です。がんは初期に自覚症状が出ない例が多く見られ、気付かないうちに体をむしばんでいきます。何らかの症状が出て医療機関を受診したときには、進行していたというケースもあります。

 

がん検診の対象は「健康な人」です。症状のない人が、健康なときに受けるものです。違和感や症状があるときには、検診ではなく医療機関の受診が必要です。

 

同じ調査で約1割の人が「がんであると分かるのが怖いから」と回答しています。死という「イメージ」を捨ててください。

がんは早期に見つけることで治癒が期待できる病気です。また、がん検診はがんを見つけることだけではなく、がんではないという安心を与えるものでもあります。怖いからと検診を避けている方や、要精密検査という結果を放置している方も、検査や検診を受けることが大切です。

がんの正しい知識を

働き方改革によって休暇取得の促進が図られています。新型コロナウイルスの拡大によって、テレワークが進み、また、具合が悪ければ休む時代が訪れつつあります。

同様に、がん検診も当たり前に受ける時代が来ることを期待しています。「時間がない」ほどに忙しい人や、家族を支える人にこそ、がん検診を。重要な会議や毎日の大切な家事と検診を同じように捉えてください。

 

一方、学校では、がん教育が始まっています。昨年から小学校、今年は中学校、そして高校でも必修となります。

これからの世代は「がん=死」という「イメージ」ではなく、検診の重要性や生活習慣改善の大切さなど、さまざまな正しい知識を得ることになります。

私たち大人の認識も改める必要があります。がんを必要以上に怖がることをやめましょう。正しい情報を知ることと、定期的な検診を受け、早期発見と早期治療に努めましょう。

参考文献
  • 内閣府「令和元年度がん対策・たばこ対策に関する世論調査」
  • 公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2021」「がんを防ぐための新12か条」
  • 静岡県立静岡がんセンター「2013年 がんと向き合った4,054人の声(がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書)」
  • 文部科学省「がん教育推進のための教材(令和3年3月 一部改訂)」

このページは当協会広報誌「健康いわて319号」にて特集した内容を一部修正して掲載しています。

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